【平成22年10月28日 関連資料を追加】
本件は、茨木市長(以下「市長」という。)が平成7年度から同16年度にかけて各年度の6月及び12月に同市の臨時的任用職員に対し一時金(期末手当)を支給したことにつき、当該一時金は、非常勤の職員に対する手当であり、その額及び支給方法が条例で定められてもいないから、これを支給することは、常勤の職員に対してのみ手当の支給を許容し、手当の額及び支給方法は条例で定めなければならないとした地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの。以下同じ。)に違反する違法な公金の支出に当たり、同市が当該支出相当額の損害を受けたとして、同市の住民である被上告人らが、上告人に対し、同法242条の2第1項4号に基づき、その支給当時に市長の職にあった者に対する損害賠償の請求をすることを求める事案であります。
| 事件番号 | 平成20(行ヒ)432 |
| 事件名 | 損害賠償請求事件 |
| 裁判年月日 | 平成22年09月10日 |
| 法廷名 | 最高裁判所第二小法廷 |
| 裁判種別 | 判決 |
| 結果 | 破棄自判 |
<判決内容>
1 普通地方公共団体の臨時的任用職員に対する手当の支給が地方自治法204条2項に基づく手当の支給として適法といえるための要件。
| 地方自治法は、常勤の職員については、給料及び旅費を支給する(204条1項)ほか、法定の各種手当を支給することができるが(同条2項)、非常勤の職員については、報酬及び費用弁償を支給するものとし(203条1項、3項)、これらに加えて期末手当を支給することができるものとして議会の議員のみを規定しており(同条4項)、また、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずにはこれらの職員に支給することができないとしている(204条の2)。 これらの規定によれば、臨時的任用職員に対する手当の支給が地方自治法204条2項に基づく手当の支給として適法であるというためには、当該臨時的任用職員の勤務に要する時間に照らして、その勤務が通常の勤務形態の正規職員に準ずるものとして常勤と評価できる程度のものであることが必要であり、かつ、支給される当該手当の性質からみて、当該臨時的任用職員の職務の内容及びその勤務を継続する期間等の諸事情にかんがみ、その支給の決定が合理的な裁量の範囲内であるといえることを要するものと解するのが相当である。 |
2 普通地方公共団体の臨時的任用職員に対する期末手当に該当する一時金の支給が、地方自治法204条2項の要件を満たさず、違法とされました。
| これを本件についてみると、本件一時金は、週3日以上の勤務をした臨時的任用職員に支給されるというのであるが、前記のとおり、茨木市においては、週3日の勤務では通常の勤務形態の正規職員の勤務時間の6割に満たず、しかも、パートタイムの臨時的任用職員が週3日勤務した場合の勤務時間は更にそれより短いものとなるのであって、人事院規則15-15が、国家公務員について、非常勤の職員の勤務時間は常勤の職員の4分の3を超えない範囲において各省各庁の長が定めるとしていることなどをも参酌すると、勤務日数が週3日という程度では、その勤務に要する時間に照らして、その勤務が上記正規職員に準ずるものとして常勤と評価できる程度のものとはいい難い。そうすると、勤務日数が上記程度の臨時的任用職員に対する本件一時金の支給は、本件一時金の性質及び当該臨時的任用職員に係るその他の事情について検討するまでもなく、地方自治法204条2項の要件を満たさず、違法というべきである。 |
3 普通地方公共団体の臨時的任用職員の給与について条例において定められるべき事項。
| 地方自治法は、常勤の職員であると非常勤の職員であるとを問わず、その給与の額及び支給方法を条例で定めなければならないと規定している(同法203条5項、204条3項)。これは、職員の給与の額及び支給方法を議会が制定する条例によって定めることにより、地方公務員の給与に対する民主的統制を図るとともに、地方公務員の給与を条例によって保障する趣旨に出たものと解される。同法の上記規定の趣旨、特に議会による民主的統制の要請に照らすと、職員の給与の額及び支給方法を条例で定めないことは許されないし、また、条例において、一定の細則的事項を規則等に委任することは許され得るとしても、職員の給与の額及び支給方法に係る基本的事項を規則等に委任することは許されないというべきである。 臨時的任用職員は、緊急の場合又は臨時の職に関する場合などに任用される(地方公務員法22条2項、5項)が、当該職員が従事する職が当該普通地方公共団体の常設的な事務に係るものである場合には、その職に応じた給与の額等又はその上限等の基本的事項が条例において定められるべきである。他方で、当該職員が従事する職が臨時に生じた事務に係るものである場合には、その職に応じた給与の額等についてあらかじめ条例で定め難いことも考えられるが、上記の地方自治法の趣旨によれば、少なくとも、その職に従事すべく任用される職員の給与の額等を定めるに当たって依拠すべき一般的基準等の基本的事項は、可能な限り条例において定められるべきものと解される。 |
4 普通地方公共団体の臨時的任用職員に対する期末手当に該当する一時金の支給が、職員の給与の額等を条例で定めなければならないとした地方自治法の規定に反し、違法とされました。
| これを本件についてみると、茨木市においては、本件一時金の支給を受けた者だけでも約800名に及ぶという多数の臨時的任用職員が同市の大半の部署に配置されており、その多くが常設的な事務に係る職に従事していたことがうかがわれるにもかかわらず、旧条例では、臨時的任用職員に対する給与の額及び支給方法又はそれらに係る基本的事項について定めがなく、また、新条例でも、規則で定める者に規則で定める期末手当等を支給する旨規定したのみで、条例自体には手当の額及び支給方法又はそれらに係る基本的事項について定めがない。このように手当の額及び支給方法又はそれらに係る基本的事項について条例に定めのないまま行われた本件一時金の支給は、職員の給与の額及び支給方法を条例で定めなければならないとした地方自治法の上記規定に反するものであり、違法というべきである。 |
5 普通地方公共団体の臨時的任用職員に対する期末手当に該当する一時金の支給が、地方自治法204条2項の要件を満たさず、かつ、職員の給与の額等を条例で定めなければならないとした同法の規定に反し、違法であるが、市長が補助職員の専決による上記支給を阻止しなかったことに過失があるとはいえないとされました。
| 本件のように、普通地方公共団体の長の権限に属する財務会計上の行為を、補助職員が専決により処理した場合には、長は、補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりこれを阻止しなかったときに限り、自らも財務会計上の違法行為を行ったものとして、普通地方公共団体が被った損害を賠償する義務を負うものである。上記ア及びイに説示したところによれば、本件一時金の支給当時の市長であるAにおいて、補助職員が専決により財務会計上の違法行為である上記支給をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりこれを阻止しなかったとまではいえないから、Aに市長として尽くすべき注意義務を怠った過失があるとして同人の茨木市に対する損害賠償義務を肯定し、被上告人らの請求を認容した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、この点に関する論旨は理由がある。 |
<例規への主な影響>
本判決に次の補足意見が付されております。| 臨時的任用職員の中には、常勤とまでは評価できないものの、勤務時間や勤務期間が長い者もいるであろうが、これらの職員に対し、生活給的な手当の性格を有する一時金を支給する現実的な必要性があることは理解できないではない。しかしながら、地方自治法204条は、議会の議員以外は常勤職員についてのみ法定の各種手当の支給を認めているのであるから、上記の性格を有する一時金を適法に支給するためには、当該職員の勤務実態を常勤と評価されるようなものに改め、これを恒常的に任用する必要があるときには、正規職員として任命替えを行う方向での法的、行政的手当を執るべきであろう。また、臨時的任用職員であっても、これらの職員に対する給与の額及び支給方法又はそれに係る基本的事項については、条例で定めるべきことが同法204条の2等で要請されているところであるから、その職が文字どおり臨時に生じた事務に係るものであっても、少なくとも給与の額等を定める際の一般的基準等の基本事項は条例に盛り込む必要があろう。そして、これらの対応のためには、当該地方公共団体の人的体制・定員管理の在り方や人件費の額等についての全体的な検討を余儀なくされる場面も生じよう。 本件における茨木市はもとより、以上のような要請を満たしていない地方公共団体においては、本判決の言渡し後は、臨時的任用職員に対する手当等の支給については、地方自治法204条2項及び同法204条の2の要件との関係で、その適法性の有無を早急に調査すべきである。その結果、本件と同様な実態が存する場合には、上記要件を欠く支給であることは容易に知り得るのであるから、そのような違法状態を解消するため条例改正が速やかに行われるべきであって、漫然と条例を改正しないまま手当等の支給を続けるときには、当該地方公共団体の長は、違法な手当等の支給について過失があるとして損害賠償責任が追及されることにもなろう。もっとも、条例改正には、手続と時間を要するものであるが、当該公共団体において、条例改正のために要する合理的な期間を徒過してもなお条例の改正がされず、違法な支給を継続する場合には、もはや過失がないとはいい難く、今後の司法判断において、厳しい見解が示される可能性があることを留意すべきである。 |
このように、常勤としての性格を有する臨時的任用職員に対し、条例に基本的事項を定めずに、給与・一時金等を支給されている場合には、裁判所に違法と判断される可能性が高いため、条例・規則等の改正の検討を行う必要があると思われます。
<補足>
上記判決の後、非常勤職員が地方自治法203条所定の「非常勤の職員」ではなく、同法204条所定の「常動の職員」に該当するとされた事例の判決が出ています。
条例に規定した「給与の額及び支給方法の基本的事項」についても認定されています。
抜粋を以下にご紹介いたします。(大阪高裁平22.9.17抜粋)
| 本件は、枚方市の住民である被控訴人が、平成15年12月10日から平成17年3月31日までの間、当時の枚方市長及びその補助機関である職員らが、枚方市職員給与条例(昭和23年条例第103号。但し、平成13年条例第3 7号による改正後で、平成17年条例第18号による改正前のもの。以下「本件給与条例」という。)54条2項、56条に基づき、「非常勤職員」と呼称された一般職の職員(甲事件~丁事件を通じて、以下「本件非常勤職員」という。) に対してした特別報酬の支給決定は、地方自治法(但し、平成20年法律第69号よる改正前のもの。以下同じ。)203条、204条の2、地方公務員法24条、25条等を根拠とする給与条例主義に反する違法な公金の支出であった旨主張して、現在の被方市長である控訴人に対し、地方自治法242 条の2第1項4号に基づき、下記のとおり、損害賠償請求ないし不当利得返還請求をすることの義務付けを求めた住民訴訟である。
(2) 被控訴人は、本件非常勤職員は、被方市から「非常勤職員」として任用を受けているのであるから、地方自治法204条1項の「常勤の職員」には該当せず、期末手当等及び退職手当としての特別報酬の支給を受けることは違法である旨主張する。 しかしながら、そもそも、地方自治法204条1項所定の「常動の職員」が「給与」の一部として同条2項所定の諸手当(特に、生活費の補助としての性質を有する期末手当、 勤務成績を評価して支給される動勉手当や給与の後払い的な性質を有する退職手当) の支給を受けることができるものとされたのは、上記「常勤の職員」に対しては、純粋に勤務時間に実働した動務自体の対価としての意味を持つ報酬ないし給与に加え、日常的かつ固定的に勤務を継続しているという観点及び普通地方公共団体から支給を受ける「給与」を生計の資本としてそれぞれの生活を維持しているという観点にかんがみて、このような生活の実情に応じた経済的手当を支給するのが適切な勤務形態であることを考慮したものと解される。したがって、「常勤の職員とは、地方公務員としての勤務に要する時間が普通の労働者の労働時間と同程度であり、かつ、その者の生活における収入の相当程度を地方公務員としての勤務による収入に依存する職員をいうと解すべきである。そうすると、普通地方公共団体に勤務する一般職の職員が地方自治法204条l項の「常勤の職員」に該当するか否かについては、任用を受ける際に合意した動務条件、実際に従事した職種及び職務内容、実働の勤務時間等の勤務実態に関する具体的事情を検討した上で、それぞれの職員が生計の資本としての収入を得ることを主たる目的として当該職務に従事してきたものであるか否かによって判断するのが相当であり、それぞれの職員がどのような呼称によって任用を受けたかという形式的な理由によって区別されるものではないというべきである。 そこで、本件非常勤職員の勤務実態に関する上記のような具体的事情を検討すると、前記認定事実(補正して引用した原判決18頁~23頁参照)によれば、本件非常勤職員は、いずれも常動職員と同様に地方公務員法17条に基づいて任用された一般職の職員であり、同人らの職種、職務内容及び勤務時間等は、別紙「本件非常勤職員の職務等一覧表」記載のとおりであるところ、勤務時間を見る限りでは、週38時間45分と定められている常勤職員の動務時問(職員の勤務時間・休暇等に関する条例2条1項、同条例施行規則3条1項参照) と比較してほとんどがそれを下回っている (本庁舎宿日直代行員のみが39時間余りとなっている。)ものの、少なくとも週4日ないし月15日の出勤を義務付けられ、週勤務時間数は最短の職務でも29時間を超えている(すなわち、「非常勤職員の勤務時間及び休暇」[平成6年7月27日号外人事院規則15-15]によれば、「非常勤職員の勤務時間は一常勤職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3を超えない範囲内において、各省庁の長一の任意に定めるところによる。」ものとされているところ、本件非常動職員の勤務時間は、 枚方市に勤務する常勤職員の勤務時間[38時間45分]の4分の3に相当する時間とほとんど同じかそれを上回っていることが認められる。)上、1日の実働時間は基本的に8時間という日常的かつ固定的な勤務形態の下で業務に従事するものであって、中には、かつて常勤職員が行つていた業務を引き継いだり、あるいは、常勤職員と共同して業務に従事する職種(上記別紙の番号4、7~13、18~20)も含まれており(丙32、34、丁1、4~10、12)、地方公務員法38条所定の制限(営利企業等に従事することの制眼) を受けるものとされていたことが認められるほか、その一方で、当該非常動職員が希望すれば、特別の事情のない限り、非常勤嘱託等の定年に関する要綱 (甲~丙事件の乙5) ないし非常勤職員の任期に関する要細 (乙12) によって定められた定年ないし更新停止年齢に達するまでの間、毎年任期の更新を重ねて受けることができていたというのである。 そうすると、本件非常勤職員が「非常動職員」と呼称されていることに法的な意味を認めることはできないのであって、本件非常勤職員の勤務実態は、常勤職員と大きく変わるものではなく、本件非常勤職員も、常勤職員と同様、生計の資本としての収入を得ることを主な目的としてそれぞれの職務にそれぞれ従事してきたものと推認されるから、本件非常勤職員は、地方自治法203条所定の「非常勤の職員」ではなく、同法204条所定の「常動の職員」に該当するものと解するのが相当である (なお、本件非常動職員が任用時において「非常勤嘱託に任ずる」ものとされた上で雇用期間を「発令日から1 年」とされたのは[原判決138頁参照]、地方自治法172条において、「常勤の職員」の人数が条例で定められた定数を超えることができないものとされている関係上、本件非常勤職員を任用することによって上記定数を超えてしまうことのないように、形式的に「非常勤の職員」として採用せざるを得なかったからにすぎないというべきである。)。 したがって、本件非常勤職員は、常勤職員と同様、地方公務員法24条6項所定の条例に基づく限り、地方自治法204条2項所定の各種手当 (期末手当、退職手当等)の支給を受けることができるということになる(地方公務員法25条1項)。 以上に反する被控訴人の主張は、 すべて採用することができない。
(3) 次に、被控訴人は、本件給与条例には本件非常勤職員に支給された特別報酬の額を決定するのに必要な具体的な基準が規定されていないことから、職員の給与は条例に基づいて支給されなければならないという給与条例主義(地方自治法204条3項、同法204条の2、地方公務員法24条6項、同法25条1項等)に反するものであるとして、本件非常勤職員に特別報酬を支給した行為は違法かつ無効である旨主張するので、以下検討する。 まず、地方自治法204条3項によれば、「給料、手当・・・の支給方法は、条例でこれを定めなければならない。」とされ、同法204条の2によれば、「普通地方公共団体は・・・いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これを・・・職員に支給することができない。」とされ、地方公務員法24条6項によれば、「職員の給与・・・は、条例で定める。」とされ、同法25条1項によれば、「職印の給与は、前条第6項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず、又、これに基づかずには・・・支給してはならない。」とされているところ、これらの条項によれば、枚方市の一般職員についても、常勤職員だけではなく、個々の非常勤職員との関係でも、同人らに支給される特別報酬の額を決定するのに必要な具体的基準及び具体的数値(特別報酬の基礎額となる月額報酬の額及び特別報酬を計算するための支給率)が本件給与条例自体にすべて規定されるのが望ましいということはできるものの、だからといって、「条例で定める」あるいは「条例に基づいて」という文言から、条例自体に上記のような具体的基準及び具体的数値が明確に規定されなければならないとか、条例によって手当に関する具体的な支給要件、額、支給方法を規則等に委任することが一切許されないものとは解されず、以下に述べる理由により、上記各条項にいう給与条例主義にあっても、条例によって給与の額の具体的な決定を執行機関に委ねることは許されるものと解すべきである(上記各条項にいう「条例」とは、上記のような具体的基準及び具体的数値そのものを規定した条例を意味するものではなく、非常勤職員に給与を支給するにあたっての指針をなるような基本的事項を示した総論的な意味での条例を解することは文理上十分に可能である。)。 そもそも、地方自治法204条3項、同法204条の2、地方公務員法24条6項、同法25条1項等によって給与条例主義が定められたことの主な趣旨は、地方公務員に対して支給される給与の額及びその支給方法を住民の直接選挙で選出された議員によって構成される議会の制定する条例において定めることにより、その民主的統制を図ることにある(なお、付随的な趣旨としては、地方公務員が労働基本権について一定の制約を受けることを考慮し、安定性の高い給与の支給をうけることのできる法的地位を付与することにあるものと解される。)ところ、上記のような具体的基準及び具体的数値が条例自体に定められていなくても、条例において、給与の額及び支給方法についての基本的事項が規定されており、ただ、その具体的な額及び具体的な支給方法を決定するための細則的事項についてこれを他の法令に委任しているにとどまる場合には、直ちに上記各条項に言う給与条例主義の趣旨を損なうものではないというべきである。 これを本件についてみると、前記前提事実等によれば、本件給与条例は、①54条2項において、非常勤職員に対し、普通報酬及び特別報酬を支給するものと定め、②55条2項において、普通報酬(月額報酬及び超過勤務報酬)のうち、月額報酬については31万6800円を超えない金額を規則で定めるものとし、③56条1項において、期末手当等としての特別報酬の支給基準日を「6月1日」及び「12月1日」、退職手当としての特別報酬の支給基準日を「満60歳に達する以後における最初の3月31日」とそれぞれ定めた上で、④56条2項の1号イ及びロにおいて、1の年度における基準日ごとの支給率については「100分の300」及び「100分の140」を超えない率及び基準日までの在職期間が6か月に満たない場合に減ずべき割合をそれぞれ規則で定めるものとし、⑤56条2項2号において、退職手当としての特別報酬の支給額を決定するのに必要な乗率については「26.015」を超えない数値を規則で定めるものとしているところ、上記②、④及び⑤において規則で定めるべきとされた「(月額報酬の)金額」、「支給率」、「割合」、「乗率」については、いずれも本件非常勤職員給与規則において具体的に規定されている(原判決別紙「本件非常勤職員給与規則の別表」参照)というのであるから、給与の額及び支給方法についての基本的事項は本件給与条例において定められており、その具体的な額等を決定するための細則的事項を規則に委任しているのとどまるものと解することができる。 そうすると、本件非常勤職員に支給された特別報酬は、上記①のとおり、本件給与条例54条2項に基づいて支給されるものであるから、上記特別報酬が「条例に基づいて支給」(地方公務員法25条1項)されるものであることに変わりはなく、また、上記特別報酬は、本件給与条例55条1項及び56条2項において定められた月額報酬及び支給率の上限値という給与の額及び支給方法についての基本的事項に基づき、その範囲内で、本件非常勤職員給与規則の別表に定められた「(月額報酬の)金額」、「支給率」、「割合」、「乗率」をもとに決定されるものであるところ、同規則(本件非常勤職員給与規則)は、地方自治法15条の「規則」として、枚方市民の直接選挙によって選出された枚方市長が制定したものであり、地方自治法16条5項本文によって条例に準じた公布及び施行の手続を経た上で住民に公開されているものであることを併せ考えれば、給与条例主義の趣旨である地方公務員の給与に対する民主的統制の要請に反するものとはいえないというべきである。
(4) これに対し、被控訴人は、本件給与条例自体に特別報酬の額を決定するための具体的基準及び具体的数値そのものを規定することが法律上要請されているものと解釈した上で、それらを規則に委任することは給与条例主義の趣旨を投却するものである旨主張する。 しかしながら、前記において説示したとおり、給与条例主義の根拠とされる各条項の文理に照らせば、被控訴人が主張するような厳格な解釈を当然に採用すべきものとは解されない上、特別報酬の額を決定するための具体的基準及び具体的数値そのものが条例自体に規定されず、それらが規則に委任されているとしても、その上限値については本件給与条例の55条2項及び56条2項において規定されているのであるから、枚方市長が規則の制定を通じて特別報酬の支給額を恣意的ないし無制眼に決定することは事実上困難であるのみならず、そもそも、給与条例主義の主たる趣旨が地方公務員に支給される給与について民主的統制を図ることにあり、しかも、直接的な民主的基盤を有する規則の法的性格をも併せ考えるならば、本件給与条例自体に上記のような具体的基準及び具体的数値が規定されていなくても、本件給与条例において少なくとも結与の額及び支給方法についての基本的事項が定められており、かつ、その具体的な額等を決定するための細則的事項が本件非常勤職員給与規則に定められている本件においては、本件給与条例及び本件非常勤職員給与規則に基づく本件非常勤職員に対する特別報酬の支給が給与条例主義の趣旨を没却した結果になっているとはいえず、給与条例主義に反するものではないというべきである。 また、給与条例主義によって地方公務員に支給される給与を民主的に統制すべきものとされた理由は、 その給与が地方公共団体の税収等の財源によってまかなわれるものであり、上記給与の総額が増加することは住民の経済的負担を増大させることにかんがみ、これを財政民主主義の観点により抑制することが要請されているからであるところ、法律及び条例によって職務上の地位が長期的に保障されている常動職員 (地方公務員法27条以下参照) とは異なり、雇用期間が1年に限定されている非常勤職員については、翌年度以降の職務上の地位が必ずしも保障されているものではない(保障すべきことが当然には予定されていない。)ことからすると、非常勤職員に支給される給与については、非常勤職員個人に支給される給与の上限を条例において規定するとともに、非常勤職員全員に支給される給与の総額については、会計年度ごとに他の歳出予算とともに議会の統制を受けるものとし(地方自治法96条1項2号、210条、211条参照)、その具体的配分に関しては任用権者及び執行機関に委ねるべく規則に委任したとしても、議会を通じた民主的続制の及ばないところで非常動職員の給与が恣意的に増加するおそれがあるとはいえないのであって、本件給与条例においても、月額報酬及びそれを基礎額とする特別報酬について、それらの上限を画する金額及び支給率等という給与の額及び支給方法についての基本的事項が定められているのであれば、財政上の民主的統制を損なうことにはならないというべきである。 さらに、前記認定事実(引用した原判決120頁~123頁参照)のほか、別紙「本件非常勤職員の職務等一覧表」記載のとおりの本件非常勤職員が従事する職種及び職務内容等を見れば、その職種、採用方法、職務内容、勤務形態等は多様であり、元々、本件非常勤職員を任用することになった経維としては、それぞれの職務等が永続的ないし長期的に維持すべき必要性を有するものであるかどうかはともかく、その時々の社会情勢に応じて多種多様な行政サービスを可能な眼り提供すべきことが要請される一方で、条例上定数に限界のある常勤職員によっては物理的に対応することが困難な実情も存在していたことが窺われるところ、このような本件非常勤職員に対して支給すべき給与の額をあらかじめ条例において固定的に規定しておくことは、その職種の非定型的かつ臨時的性質にかんがみ、必ずしも適切ないし容易であるとはいえず、規則において柔軟かつ機動的に対応できるように定めることには十分な合理性があるということができるのであって、これらの背景事情を考えるならば、特別報酬の額を決定するのに必要な具体的基準及び具体的数値を条例(本件給与条例)に規定するのではなく、それを規則(本件非常勤職員給与規則) に委任しているからといつて、給与の額及び支給方法についての基本的事項を条例に定めている限り、給与条例主義の趣旨である民主的続制が弱められているということはできない。 なお、公務員の給与等の勤務条件に対する民主的統制を図るべきことは、国家公務員と地方公務員において何ら異なるものではない (最高裁昭和5 1 年5月21国大法廷判決・刑集30巻5号1178頁参照)。そして、国家公務員に給与を支給するための根拠法規は、一般職の職員の給与に関する法律(いわゆる給与法)であり、その3条2項によれば、「いかなる給与も、 法律又は人事院規則に基づかずに職員に対して支払い、又は支給してはならない。」ものとされているところ、これに対し、地方公務員に給与を支給するための根拠法規は、地方自治法ではなく、地方公共団体が制定した給与に関する条例であるから、国家公務員に関しては「法律又は人事院規則」 にその給与の額を決定するのに必要な具体的基準及び具体的数値を規定すべきものとされているのであれば、地方公務員に関しても「条例」又は「規則」にその給与の額を決定するのに必要な具体的基準及び具体的数値が規定されることが要請されているというべきである(もっとも、国家公務員の給与について人事院規則に自紙的な委任をすることが許されないのと同様、地方公務員の給与についても規則に白紙的な委任が許されないのは当然であるとともに、給与条例主義により、少なくとも給与の額及び支給方法についての基本的事項が条例において定められるべきことは、前記説示のとおりである。)。 そうすると、枚方市が非常勘職員に対して特別報酬を支論するにあたり、その額及び支給方法についての基本的事項として、本件給与条例54条2項において、非常勤職員には普通報酬及び特別報酬を支給するものと定める一方で、55条2項において、上記特別報酬の基礎額となる月額報酬の上限額(31万6800円)を定め、56条2項の1号イ及び口において、期末手当等としての特別報酬の額を決定するのに必要な支給率の上限率(100分の300、100分の140)を定め、56条2項2号において、退職手当としての特別報酬を決定するのに必要な乗率の上眼率(26.015)を定めた上で、月額報酬の具体的な額 (給与表) や特別報酬の額を決定するための具体的な支給率等については規則 (本件非常勤職員給与規則) に委任するという給与体系を採用しているからといつて、給与条例主義に反するものではないというべきである。 以上に反する被控訴人の主張は、 すべて採用することができない。 |
上記の二つの判決の相違は、次のような点にあると思われます。
【第1段階】 臨時的任用職員・非常勤職員が、正規職員に準ずるものとして常勤と評価できる否か。
茨木市 → 常勤ではないと認定(この段階で既に、地自法上は一時金の支給対象となりえず違法。)。
枚方市 → 常勤であると認定。
【第2段階】 条例に基本的事項が規定されているか。
茨木市 → 規定されていないと認定。
枚方市 → 基本的事項は規定されていると認定。
《参考》
大阪自治体労働組合総連合 (大阪自治労連) - 枚方市非常勤裁判大阪高裁判決について [2010.9.18]
<関連資料 2010.10.28追加>

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